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翌日。日曜日にもかかわらず目が覚めると久弥さんの姿はなく、身支度を整え慌ててリビングに向かう。
「おはようございます」
「おはよう」
リビングに顔を出すと、久弥さんはコーヒーを飲みながら返事をしてくれた。
夕飯を食べるのが遅いからか、彼の朝食はコーヒーだけなのが定番だ。白の襟付きシャツにワイン色のケーブルニットを組み合わせ、相変わらず上品にまとめている。
対する私はブラウンのハイネックにチェック柄スカートを合わせていた。
「瑠衣もどうだ?」
「あ、はい。いただきます」
逆に座っていた久弥さんは席を立ち、キッチンにコーヒーを淹れに行く。それに私も続き、買い置きのパンを温めようとした。
「久弥さんはいりませんか?」
「俺はいい」
返事はわかっていたが、念のための確認だ。苦笑してオーブントースターにセットしようとする。
「瑠衣」
「はい?」
彼の方を向くと、さりげなく唇を重ねられた。
「今日の服もよく似合っている」
頭にぽんと手を置かれ、服まで褒められる。はっと気づいたときには久弥さんはカップを取り出そうとしており、あまりにも無駄のない動きで、反応するのにワンテンポ遅れてしまった。
照れてしまいそうになるのを必死にこらえ、平静を装って朝食の準備に取りかかる。
彼が準備してくれた私のコーヒーカップにはミルクと砂糖がひとつずつ添えられていた。私の好みも覚えていてくれるんだと思うとくすぐったい。
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