第五章 初デートで縮まる距離は確実に

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「そう言うなよ。これでも土壇場で悪いとは思っているんだ。しかも今回はお前だけじゃなくて瑠衣ちゃんにも出席してもらうことになりそうだから、直接お願いするのが筋だろう」 「わ、私もですか?」  先ほどの久弥さんとの話に繋がり、うろたえて尋ねる。 「そう、久弥の妻として。巻き込んでごめんね。でも祖母も瑠衣ちゃんにぜひって言っていて」  たしかに結婚したなら私も無関係ではいられない。けれどパーティーなど参加した経験はないし、服も持っていない。なにより……私たちの関係を考えたら、多くの人々に彼の妻だと知られるのはよくないのでは? 「大丈夫。あくまでも久弥たちには華を添えてもらうだけだから。ふたりにはホストではなく、ゲストとして楽しんでもらえたらって思っているんだ」  私の顔色を違う意味で読んだのか、久志さんが懸命にフォローを入れてくれる。  そのとき久弥さんのスマートフォンが音を立て、すぐさま彼は電話に出た。ややあって席をはずすと目で訴えかけてきてリビングを出ていく。  久志さんとふたりになり、パーティーの件を詳しく尋ねようとした。しかしその前に彼が急に神妙な面持ちになって口を開く。 「瑠衣ちゃん、昨日は驚かせたね。病院で親父と会ったんだろ?」  まさか昨日の話題を振られるとは思ってもみなかったので、面食らう。久志さんは大きくため息をついて前髪をかき上げた。
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