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「そう。俺ははぐらかされるから。奥さんである瑠衣ちゃんにならあいつも本音で話すかもしれない。正直、初めて会ったときも言ったけれど、久弥が結婚するって聞いて本当に驚いたんだ。あいつが誰かを必要とするなんて」
嬉しそうに告げられ、罪悪感がチクリと刺激される。久志さんは私たちの結婚の事情を知らないから、純粋にこの結婚を喜んでくれているんだ。
「悪い、待たせたな」
リビングに戻ってきた久弥さんに声をかけられ、私と久志さんの意識はそちらに向く。一気にふたりの視線を受けてか、久弥さんは眉をひそめた。
「瑠衣に余計な話をしていないだろうな」
「お前がどういう人間なのか一生懸命説明しておいたよ」
久弥さんの眉間の皺が深くなったが、久志さんはものともしない。そこから久志さんは真面目な顔でパーティーの流れや段取りなどを説明していった。
「じゃあ、瑠衣ちゃん。来週はよろしく。久弥に言ってなんでも好きなものを買ってもらえばいいよ」
久志さんが指しているのはパーティーに着ていく服だ。茶目っ気たっぷりの久志さんは強引ではあるもののどうも憎めない。きっと彼の人となりなんだ。
久志さんを玄関で見送った後、ちらりと久弥さんの横顔を見る。
久志さんはきっと素敵な社長になるだろうけれど、久弥さんはどんな気持ちなのかな?
そこでこちらに視線を向けた久弥さんと目が合う。
「悪いな、突然」
「いいえ。あの私も出席していいんでしょうか?」
おそるおそる尋ねたら、久弥さんは虚を衝かれた顔になる。
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