第五章 初デートで縮まる距離は確実に

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 これでも社会人となりそれなりの蓄えもあるし、なにより久弥さんと結婚して、彼から支払われているお金は、母の手術代以外にはほぼ手をつけていない。こういうときこそ使うべきだ。 「気にしなくていい。いつもとまた違う瑠衣を見られるなら安いものだ」  まったく取り合わず、逆に平然と返す彼になにも言えなくなる。それはどこまで本気なのか。でも、と主張しそうになるのをぐっとこらえる。 「わかりました、精いっぱいお洒落しますね。……ありがとうございます」  お礼を告げたら、そっと頭に手を置かれる。優しく微笑む久弥さんの表情に、つい視線を逸らしてしまった。  昨日以上に疲労を感じるのは、体力的にではなく気疲れしたからなのだと悟る。お風呂に入り、眠たさも一段と増していた。夕飯は外で食べて帰ろうという久弥さんの提案に素直に頷いたのは、正解だったと思う。 「眠いのか?」  無意識に目をこすった私に気づいてか、すぐ背後から声がかかる。ついさっきまでパーティーのマナーに関するコラム記事をスマホで読み漁っていたのもあって目も疲れていた。  私は今、リビングのソファで、うしろから久弥さんに抱きしめられた状態で座っていた。ここでのこういったスキンシップは久しぶりだ。言い知れぬ心地よさに包まれ彼に体を預けると、久弥さんは私の頭を撫でてくれた。
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