第五章 初デートで縮まる距離は確実に

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「二日連続出かけて疲れただろ。ベッドに行くか?」 「久弥さんが運んでくれるなら」  軽口を叩いて、いい加減久弥さんから離れるべきだと立ち上がろうとした。ところが私の前に回されていた彼の腕が、私の太ももをなぞるようにして膝下に添えられる。ぐいっと彼の方に寄せられ、体が傾いたかと思ったらそのまま宙に浮いた。 「わっ!?」  間抜けな叫び声とともに脊髄反射で彼にしがみつく。 「ひ、久弥さん?」 「奥さんの仰せのままに」  抱き上げられた状態となり、うかがうように久弥さんの名前を呼ぶと冷静な返答がある。まさか本気にされるとは。不安定な体勢で彼の首に腕を回し、白旗を揚げる。 「ごめんなさい、冗談です。下ろしてください」 「遠慮しなくてもいい」 「してません!」  打てば響くやりとりを交わしつつ久弥さんは歩き出す。こんな真似をされるのはおそらくほぼ記憶にもない子どもの頃以来だ。恥ずかしさと申し訳なさで顔が熱くなる。  へたな抵抗は余計に子どもっぽいと思われてしまうかもしれない。おとなしくするのが得策だと結論づけた。 「すみません」 「謝るな。これも夫の特権だろ」  そう言って額に口づけを落とされる。  私、久弥さんに翻弄されてばかりだ。  彼が夫として振る舞ってくれるのなら、私も妻として彼のためできることをしたい。パーティーの成功はもちろん、明日からもう少し身なりにも力を入れよう。  心の中で決意して、腕に力を込めた。
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