5592人が本棚に入れています
本棚に追加
十河社長の挨拶でパーティーは始まり、新規事業のプレゼンテーションが行われた。そのあと、十河社長と久志さんのもとに多くの人々が集まり、久弥さんは少しだけ手すきの状態になる。
久弥さんが飲み物を持ってきてくれたので素直に受け取る。搾りたてのオレンジの果汁の入ったノンアルコールカクテルは、上品であとを引かないすっきりとした味わいだ。
「来ている人たちはもちろん、サービスもお料理もすごいですね
」
これが一流の世界なんだな。喉を潤しながらしみじみ呟く。
「そうか? 瑠衣の作った料理の方がずっとうまい」
すかさず久弥さんから返され、目を見張る。お世辞だろうと思って彼を見たら、久弥さんは意外にも真面目な顔をしていた。
「いつもありがとう。感謝している」
律儀にお礼を言われ、胸の奥が熱くなる。完全な不意打ちだ。
「またスペシャルカレー、作りますね」
「あれは、やりすぎだろ」
わざとおどけて返したら予想通りの反応に笑う。この前のバレンタインの日、夕飯はハンバーグカレーにしたのだが、ニンジンをハート型にくり抜き、ご飯やハンバーグもハートにしてみたのだ。
甘いものがあまり好きではないと言っていたので、私なりにバレンタインに乗せて感謝の気持ちを伝えたかった。結果的に久弥さんは驚きつつペロリと完食してくれたので、自己満足とはいえ嬉しくなる。
バレンタインのプレゼントとしては、彼の好きなお酒を渡した。
最初のコメントを投稿しよう!