第六章 傷跡に触れて気づく想いは秘密に

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 そっと唇が離れ至近距離で視線が交わり、目は口ほどにものを言うという意味が理解できた。お互いなにも言葉を交わさないまま、どちらからともなく唇を重ねる。 「んっ……」  唇を舐めとられ受け入れるように軽く口を開けると、すぐにキスは深いものになった。彼の巧みな舌の動きに翻弄され、唾液が混ざり合う。舌を差し出したらからめとられ、軽く吸われて反射的に身震いした。  とっさに離れようとしたが腰に回された腕に阻止され、代わりに落ち着かせるように頭を撫でられる。抵抗を見せず精いっぱい応えようとするが、正しいやり方がわからず久弥さんにされるがままだ。 「ふっ……ん、んんっ」  苦しくて息をするタイミングが掴めない。ぴちゃぴちゃと淫靡な水音が脳に直接響いてくるようで、羞恥心で頭がおかしくなりそうだ。  それなのにやめてほしいと思わない。むしろ、もっとしてほしくて胸が苦しくなる。  私、こんな人間だった? 誰かを、なにかを夢中で求めるなんて。  久弥さんのシャツをぎゅっと掴み、キスを続ける。かすかなアルコールの味がするのは彼のせいだ。  唇が離れ、滲む視界に久弥さんを捉える。自ら抱きついて彼の胸に顔をうずめた。心臓が破裂しそうだ。 「あの、すみません。お疲れのところを……」  ふと冷静になり、慌てて久弥さんから離れようとした。お互いにパーティーから戻ってきて、着替えさえまだ済ませていない。
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