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『瑠衣はなにも悪くないし、俺にも周りにもうしろめたさを感じる必要はまったくない』
久弥さんは迷いなく私は悪くないと言い切ってくれた。私の気持ちを汲んで寄り添ってもらえるなんて思いもしなかった。
困った。あんな態度を取られたら、もういい加減認めないといけない。私たちは目的があって契約した期間限定の仮初めの夫婦だ。けれど私は、久弥さんに惹かれている。
ずっと自分の気持ちに気づかないようにしていた。夫の特権とか妻の権利とか、まどろっこしい言い方をしないと近づけなくて、触れ合えない。
久弥さんだって、そう。理由があるから私と一緒にいるだけで、彼の心までは手に入らないのがわかっているから。
もう二度と身分違いの相手と恋はしないと決めていたのに。
悶々としつつ久弥さんがまだ入っていないのを思い出し、さっさと出ようと決める。もうのぼせるほど浸かった。
備え付けのガウンを借りててきぱきと身支度し、ふかふかのタオルで髪を拭きながらリビングに戻った。久弥さんはソファに座り、持ってきていた本を読んでいる。
「お待たせしました」
一瞬、声をかけるのをためらったが、呼びかけるとすぐに彼の顔がこちらを向いた。久弥さんは立ち上がり、緩やかに近づいてくる。
「ちゃんと温まったか?」
あきれたような口調で尋ねられ、唇を尖らせる。どうやら意識して緊張していたのは私だけのようだ。
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