第六章 傷跡に触れて気づく想いは秘密に

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 彼の手のひらが私の頭の上にのせられ、ベッドに散った髪に滑らされる。続けて首筋に音を立てて口づけられ、背中が浮きそうになった。 「あっ……その、久、弥さんはシャワー浴びなくていいですか?」  ぎこちなく尋ねたら、彼は首元に唇を寄せて答える。 「瑠衣がこのままでかまわないなら」  吐息さえ薄い皮膚を刺激し、くすぐったいような鳥肌が立ちそうな、複雑なじれったさを感じる。 「私じゃなくて……久弥さん、疲れていらしたのに」  本当はお風呂に入ってゆっくりしてもらった方がいい。そう勧めるのが妻の役目? とはいえ、この状況でする話じゃないかも。どうしよう。やっぱり私、空気読めてなさすぎる?  あれこれ考えていたら久弥さんが顔を上げ、額をコツンと重ねてきた。 「瑠衣はいつも俺を気にかけてくれるんだな」  嬉しそうに微笑まれ、頬を撫でられる。おかげで私の緊張がわずかに解けた。 「私は……久弥さんの妻ですから」  精いっぱい虚勢を張って答える。すると久弥さんは余裕たっぷりに笑った。 「なら、可愛い妻に癒してもらおうか」  言い終わるや否や唇を重ねられ、彼に溺れていく。  この先にあるものが永遠とか確かなものじゃなくていい。ただ私が久弥さんを好きな気持ちは本物だ。  触れてほしくて、求めてほしい。彼の言う通り、今は私が彼の妻だから。  唇の力を抜くと、久弥さんの厚い舌が忍び込まされゆっくりと腔内を探られる。緊張でつい喉の奥に自分の舌を引っ込めそうになったが、思いきって受け入れる姿勢を見せた。
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