第六章 傷跡に触れて気づく想いは秘密に

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 すぐさま舌をからめとられ、時折吸われては舐められるのを繰り返し、口腔内に熱がこもっていく。唾液も吐息もすべて熱い。 「ふっ……ん……んん」  切なげな声が勝手に喉の奥から漏れる。酸欠を起こしそうだ。それなのに苦しさどころか、もっとして欲しいとさえ思ってしまう。無意識に久弥さんのシャツを掴もうとしたら、ゆったりと唇が離れた。  わずかに息を乱した久弥さんが、じっと私を見下ろしてうかがってくる。その艶っぽい表情に心臓が跳ねた。 「キスしているときの瑠衣の顔、たまらなく可愛いな」  頬を撫でながら呟かれ、一瞬で体温が上昇する。反射的にふいっと顔を背けた。 「そ、そんなことないです」  とっさに否定したもののどういう顔をしているのかは想像もできない。私はキスの途中で久弥さんの表情を確認する余裕なんてないのに。 「可愛いよ。瑠衣のいろいろな表情、もっと俺だけに見せてほしい」 「あ」  顔を背けていたから、彼の手がガウンにかけられたのに気づくのが遅れた。そっと胸元を緩められ、思わず身を硬くする。 「あの」  再び久弥さんの方を向いたら、素早く唇を重ねられた。 「心配しなくても、瑠衣が嫌がる真似はしない。全部見せてもらうだけだ」  そう言って背中に手を滑り込まされ軽く浮かされる。彼の意図を汲んで上半身を起こすと、久弥さんはゆっくりとガウンを脱がしにかかった。  肩が剥き出しになり、寝るだけだと思っていたので下着もつけていなかった肌があらわになる。抵抗はしないものの恥ずかしさで息が詰まりそうだ。
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