第一章 理解不能のプロポーズは突然に

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「すみません。そんなつもりはないんです」  慌ててフォローしたら久弥さんは自嘲的に笑った。 「たしかに嫌いな相手と食事をしても苦痛なだけだろうな」 「へ?」  彼の言い分に目を丸くする。嫌い? 誰が、誰を?  久弥さんは軽くため息をついた。 「あまりいい印象をもたれていない自覚はある」 「そ、それはこちらのセリフなのですが」  思わず本音で言い返す。どう考えても彼は私をよく思っていない。けれど今は先に誤解を解くべきだ。 「嫌っていませんよ。最初にあんな言い方をされて身構えたのは事実ですけど……でも嫌いになるほどあなたのことをなにも知りませんから」  言ってから気づく。これはこれでまた無礼な言い方ではないだろうか。どうしてこう、私は上手く立ち回れないのかな。 「そうだな」  自己嫌悪に陥っていると隣から反応があり、改めて顔をそちらに向ける。すると笑うとまではいかなくても、幾分か穏やかな表情をした久弥さんが目に映った。 「俺も君をまだよく知らない。だからひとまず一緒に食事をしないか?」  まさかそういう結論に持っていくとは思わなかった。 「私はあなたにはもちろん、光子さんにもなにかしてほしいとか、返してもらおうとは思っていません」  義理堅いのか、光子さんの意思をどこまでも尊重するのか。 「わかっている。俺が個人的に誘っているんだ」  ところがあまりにもストレートな切り返しに、頬がかっと熱くなる。
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