プロローグ

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 本来、こうして言葉を直接交わす機会はなどありそうもない人だ。そんな私がここに足を運んだ理由は、母の代わりを務めるため。  母は、子どもたちの居場所づくりや子育てサポートを目的としたNPO法人の施設で事務局長として働いている。  事務所兼施設には図書置き場や、子どもたちが勉強したり好きに過ごせるスペースがあり、こども食堂を定期的に開催してフードバンクの機能も果たしている。  行政と連携し委託事業の一環として相談機関の役割も担っているが、補助金や助成金のみでは財政的にはいつもカツカツだ。  NPO法人として利益は求めないものの運営には、ある程度の資金が必要だ。利用したい子どもや親子が増える一方で、人手も足りない。そんなとき個人から大口の寄付の申し出があったのだ。  それが光子さんだった。お礼を告げようと連絡したら秘書の人から入院中と聞かされ、よかったらと病院を教えられて、ここまで来た。  お見舞いの品と共に持ってきたのは、子どもたちからのお礼の絵や手紙だ。図書や備品の充実、なにより人員を増やせそうなのは有難い。  本来、母が挨拶に訪れるべきなのだが、ここ最近体調が優れず私が代打で来た。しかし相手が大手グループ会社の会長とは知らなかったので、今さらながら分不相応に感じる。 「大人はともかく、子どもに対する直線的な援助ができる機関はまだそこまで多くないものね」
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