プロローグ

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 光子さんは子どものためのNPOの活動に興味があるそうで、にこやかに話を聞いては質問してくれる。立場とは裏腹に気さくで明るい人だ。 「そう、ですね。でもサポートとか援助ではなく、ひとつの居場所だと考えてほしいんです。子どもはもちろん、大人にとっても」  少しだけ迷ったが、光子さんの言い方を訂正する形で返事をした。 「困ったときに誰かに頼るのは、恥ずかしいことではなく当然だと思うんです。そこにうしろめたさなんて感じる必要はない。子どもたちにはたくさんの人と関わって、周りに支えられているのを実感しながら成長してほしいんです。ひとりじゃない、頼ってもいいんだって。大人も同じです」  こういう機関を利用すると、どうしても“かわいそう”と見られがちだが、そんなことはない。困ったときに気軽に頼れる人や場所があるのは、生きていくうえできっと大きな力になる。とくに世界がまだ狭い子どもをメインに寄り添えたらという考えの下、誰もが利用できる施設にはしている。 「あの、もちろんなにか事情のあるお子さんや親御さんの相談も受けますし、サポートや適切な援助へ導入する体制もとっています」  慌ててフォローすると、光子さんは目を細めた。 「そうね。誰かに甘えたり頼ったりするのって簡単なようで実はとても難しいから。幼少期の影響が大きいのかしらね、やっぱり」  光子さんの最後の言い方は、誰かを思い浮かべているようだった。彼女は私の目を真っすぐに見つめてくる。
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