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美樹が配属されたのは応用微生物研究室。本当は化粧品化学研究室に入りたかったがジャンケンで負けた。
卒業研究は、地味でつまらない。
内容は、ざっくりかいつまむと、遺伝子工学で新しい機能を付加した酵母を使って高収率(たくさん)、高速度のエタノールを得るというものだ。
まず教授や助手がDNAリガーゼという酵素で酵母のDNA(つまり体を作る遺伝子)に新しい機能をプログラムした外来性のDNAを挿入する。
挿入。、、、挿入。
美樹は下腹部が熱いような錯覚を覚えた。
いかんいかん、こんな学術用語で興奮していたら変態みたいじゃないか。
こうして、いっぱいお酒を造るように改造された酵母を、硫酸で加水分解したサトウキビ原料に加え、エタノールの生成具合を見るのだ。加水分解とは、まあ、この場合はサトウキビを酵母が食べやすいようにお粥にするというイメージで問題はない。
美樹の担当は、タンクに混ぜた酵母がどのくらいエタノールを生産するかを4時間ごとに測定すること。当然一日は24時間なのだから、病院の看護師と同じように3人一組で夜勤や準夜勤のシフトを組む。
昨日は準夜勤の帰りに、不良三人組と出くわしてしまった。まあ、その後荒巻というイケメンに助けられたというラッキーもあったが。
はっきり言って研究はつまらない。ただ教授と助手が作った酵母をタンクに入れ、時間通りにアルコール濃度を調べる。何も建設的な事は無い。指示された通りにやる。それだけなのだ。教授の駒でしかない。
かといって、新しい実験系を組み上げるような頭は美樹にはない。唯々諾々と先生に従っていれば、晴れて卒業だ。
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