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私達が小学生の頃、オカルトっぽい遊びが大流行していた。こっくりさん、ひとりかくれんぼ、七不思議、百物語、それから信憑性の薄い数多くのおまじないの類。
理由は単純明快、その頃とある子供向けアニメが女の子を中心に流行っていたからである。“フシギ冒険隊・マカロン!”というそのアニメは、学校に封印された怪異に小学生の女の子四人が立ち向かっていくという話だ。有名な少女漫画雑誌に連載された漫画なのだが、絵が少女漫画っぽいキラキラではなくシンプルで見やすかったこと、そしてアニメの出来が非常に良かったことなどから大ヒットを記録したのだった。
あの頃の女子小学生で、マカロンを見ていなかった子はほとんどいないことだろう。
毎週水曜日の放送の後は、SNSの多くがマカロンの話題で持ちきりになっていた。マカロンのコスプレをする“大きなお友達”も少なくなかった。そして現役小学生だった私達も、マカロンに扮しておまじないを試したり、七不思議調査をしたりといったことが流行っていたというわけである。
まあ、放課後にこっそり残って学校をうろちょろしたり、夜こっそり校舎に侵入する生徒が多かったので先生たちはだいぶ辟易していたようだが。
――結局、私達自身でオバケに遭遇したりとか、そういうことはできなかったけど。
でも、楽しかった思い出は残っている。あの時の自分達は、幽霊に遭遇したり不思議体験をしたりといったこと以上に、同じ話題で盛り上がって冒険することが楽しくて仕方なかったのである。
――百物語。百個も話すなんてできなくて、最終的にはホラーとは思えない短いギャグ話ばっかりしてたっけ。……まあ、百個もネタがないのはしょうがないことではあったんだけど。
なんだか、あの頃に帰ったみたいだ。そう思うと俄然やる気になってきた。
今この場には蝋燭もないし、お酒とおつまみが広がっていて雰囲気もへったくれもないけれど。少しだけあの頃に帰ったつもりになって、怪談噺を楽しんでみるのも面白いかもしれない。
「いいんじゃないかな」
私が乗ると、カオリちゃんが嬉しそうに目を輝かせた。
「昔は知らなかった怪談とか、今なら知ってたりもするしね。マチちゃんとサクラちゃんはどう?」
「まあ、悪くはないですけど」
「ちょっと昔みたいで楽しいかもねえ。わかった、サクラもやるう!」
「おおおおわが友よおおお!」
やや酔っ払ってテンションが高くなったカオリちゃんが、大袈裟に私達を抱きしめて言った。
「よし、じゃあまず誰から語る!?」
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