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結局、怪談を話す順番はジャンケンで決まった。最初に私が話して、次がマチちゃん、三番目がサクラちゃんで、最後がカオリちゃんということになった。
「サクラね、それ以来絶対……三丁目に近寄らないことにしているの」
意外にも、サクラちゃんの怪談がものすごく怖かった。彼女がアニメ声(作ってるわけではなく、本当に元々そう言う声なのだ)で語ってくれた怪談は“三丁目の怪人”というもの。高校の頃に演劇部に入っていたという彼女は、演技力も抜群に上手かった。思わず私達が、次の缶ビールを開ける手も止めて聞き入ってしまったほどに。
「阪本さんみたいに、引きずり込まれたらどうなるか……。それこそ、サクラも家に、指一本だけになって送りつけられちゃうかもしれないでしょ?そんなの怖すぎて絶対やだもん。だからみんなも、A町に行く時は気を付けてね。間違っても、逢魔時に三丁目の……薄暗い路地に入っちゃだめ、だよ?」
「ひいいいいっ!」
「ここここここここあいですうううう!」
「ふ、二人とも情けないわね!あ、あたしはこれくらい全然平気だし!」
「そんなこと言いながらカオリちゃんだって声ひっくり返ってんじゃん!」
「うううううるさいわよっ!」
まあこんなかんじで阿鼻叫喚。びびっていることを指摘されたカオリちゃんは、半分涙目になりながらも誤魔化すように背筋を伸ばした。ちなみに、彼女は普通に立ってにこにこしていればかなりの美人である。中身がいろいろと残念なだけで。
「と、とにかく!次はあたしが話すわよ!た、タイトルは“告白”!」
「はいはい」
よっぽど、怖がっていると思われるのが嫌だったらしい。カオリちゃんは無理やり自分の怪談を始めてしまった。
しかし、よりにもよって“告白”とは。まったく捻りもないなと思う。恋愛の告白とか、そう言う話だろうか。
「今、みんなこのタイトル聞いてコイバナか何かだと思ったでしょ」
ところが、私の胸の内はすっかり読まれていたらしい。ジト目になりながら、カオリちゃんは続ける。
「そうじゃないのよ。これ、あたしの実話怪談なの。というか、あたしの“罪の告白”みたいな話だと思って聞いてほしいわけ」
「罪の告白?なんか悪戯でもしたんですか?」
「そんなチャチなもんじゃないわ。……あたし、小学生の頃、人を殺してしまったことがあるのよ」
「!?」
突然何を言いだすのか、彼女は。私とマチちゃんとサクラちゃんは一気に固まってしまった。
楽しい空気が冷え込んだことに気が付いたからだろう、ごめんね、とカオリちゃんは申し訳なさそうに眉を下げる。
「でも、これ本当のことだし。……そろそろ我慢できなくなったから聴いてほしいの。あたしと……“おこのぎさん”のこと」
カオリちゃんは神妙な顔つきで話し始めた。
実話怪談、もとい――彼女の、小学生の頃の罪の告白を。
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