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あたし達が小学生の時、いろんなおまじないが流行してたじゃん?
で、中でも女の子にはさ、恋愛のおまじないってのがバリエーション豊富に流行ってたわけよ。あたしも当時、クラスの男子に好きな奴がいてさ、その子との関係がうまくいくようにって思って、いくつかおまじないを試したりしてたのね。
で、特に効果があるって有名だったのが、“階段ウタ”ってやつだった。
あたし達の頃には、地域に子供の数がだいぶ減っちゃってたから、それぞれ二クラスか三クラスずつしか教室がなかったのね。で、ボロッ誓ったうちの学校は、子供がたくさんいたころにできたやつだったから――教室が結構余っちゃってたのよ。覚えてる?せっかく四階建ての建物なのにさ、四階の教室ってほとんど使われてなかったこと。とくに東校舎の四階って、工作室に行くことがあるかなーってくらい。用事がなかったら全然足も踏み入れなかったのよね。
東校舎には屋上があってさ。東校舎の東階段から屋上に行くことができるんだけど……昔そこから飛び降りた生徒がいたってんで、入口はずっと閉鎖されたままだった。行けるのは、鍵のかかった屋上の前のドアまで。
で、その屋上へ続く階段を使ったおまじないが“階段ウタ”だった。東校舎の四階に行って、四階の階段の前に立って。“●●君大好きです、付き合ってください”って宣言してから、屋上への階段を登るの。心の中で段数を数えながらね。
で、屋上のドアの前に立ったらもう一度同じ宣言を口にする。そしてまた、階段の数を数えながら降りてくる――これだけ。
制約はただひとつ。
この工程を、誰にも見られないこと。
見られずに終わらせられたら、●●君と結ばれる。
見られてしまったら絶交される、そういうおまじないだった。
『鈴原君、大好きです。付き合ってください』
あたしもそのおまじないを試したの。クラスでさ、ドッジボールが超強かった鈴原君、覚えてない?あたしは当時、あいつのことが好きでさー。マジで付き合いたいとか思っちゃってたわけよ。
さっきも言ったけど、東校舎の四階ってマジで過疎ってて、人が全然来ない場所だった。だからきっと見られずに成功できるはずって、そう思ってたの。
それが甘かった。つか、こんなおまじないが流行してんだから、そりゃ“同じ目的”の人は来るわよね。同じクラスの“小此木さん”が、まさにあたしが宣言したタイミングで現れたの。で、言った。
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