おこのぎさん。

6/6
前へ
/6ページ
次へ
 *** 「なんか、怖いっていうより不思議な話ですねえ」  カオリちゃんが話終わると同時に、しんみりとした声でマチちゃんが言った。隣でうんうんとサクラちゃんが頷いている。 「不思議不思議。四年生の時だよね?サクラも、おこのぎさん、なんて変わった苗字の人、覚えがないよ?」 「私もです。本当にいたんですか、そんな人?」 「失礼ね、嘘じゃないわよ!本当にいたんだから!でも、死んじゃった後存在が抹消されてて……」  カオリちゃん、マチちゃん、サクラちゃんはわいわいと騒いでいる。  私は。  飲みかけのビールが入ったコップを持ったまま、完全に固まっていた。 ――ねえ。  今の話、一体どういうことなんだろう。 ――私。……私の名前……小此木莢(おこのぎさや)、なんだけど。  子供の頃、確かにツインテールをしていた。  そして鈴原君という男の子が好きだった。確かに覚えている、なのに。 ――そういえば、私。……今日ここに来てから……一度も名前を呼ばれてない。  目の前がゆっくり暗くなっていく。  ああ、私は、一体――誰?
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加