11人が本棚に入れています
本棚に追加
***
「なんか、怖いっていうより不思議な話ですねえ」
カオリちゃんが話終わると同時に、しんみりとした声でマチちゃんが言った。隣でうんうんとサクラちゃんが頷いている。
「不思議不思議。四年生の時だよね?サクラも、おこのぎさん、なんて変わった苗字の人、覚えがないよ?」
「私もです。本当にいたんですか、そんな人?」
「失礼ね、嘘じゃないわよ!本当にいたんだから!でも、死んじゃった後存在が抹消されてて……」
カオリちゃん、マチちゃん、サクラちゃんはわいわいと騒いでいる。
私は。
飲みかけのビールが入ったコップを持ったまま、完全に固まっていた。
――ねえ。
今の話、一体どういうことなんだろう。
――私。……私の名前……小此木莢、なんだけど。
子供の頃、確かにツインテールをしていた。
そして鈴原君という男の子が好きだった。確かに覚えている、なのに。
――そういえば、私。……今日ここに来てから……一度も名前を呼ばれてない。
目の前がゆっくり暗くなっていく。
ああ、私は、一体――誰?
最初のコメントを投稿しよう!