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ギリッと歯軋りの音が響く。
ミカエルが苛立ち、奥歯を噛み締めたのだ。
「エル、君が僕の名前を継いでミカエルを名乗っているのと同じだってことだよ」
「同じじゃない。ディーがそうさせたんだから。全部あんたの思惑通りに行くと思わないで」
ミカエルから何を言われてもサンダルフォンの笑みは変わらない。
「君を操ろうなんて思ってないよ、エル。僕らは対なのだから、どちらが勝っているとか劣っているとかないし」
「それは、ずっと昔の話よ。ディーは大天使ミカエルの姿を捨て、対である私をミカエルにした。だから私は新たなルシフェルを作り、今もまだ囚われている」
彼女はミカエルの妹であり、彼と対の魂を持つものだった。
「エルは今のままでいいよ。君の存在を脅かす気はない。僕は僕の望みのためにあるんだ。だから、君が僕に縛られないのと同じで、僕も君に縛られることはない」
「わかってるわ」
対のふたりは、互いの道が交わることはないと直感していた。
無言で立ち尽くしたまま、時が過ぎていく。
その後、天界でサンダルフォンの姿を見たものはいなかった。
彼が再び、下界で人間として生きていること知ったのはまた別の話。
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