デスゲームは終わっていた。

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 ***  私立笛葺高等学校(しりつふえぶきこうとうがっこう)は変わっている。  何の為にあるのかわからない校則が、今年になってからやたらめったらと増えたのだ。 「髪の毛を茶髪に染めるな、はまだわかるんだよ」  休み時間の教室にて。私は親友のミナちゃんにぼやいたのだった。 「それまで頭髪に関してゆるっゆるだったうちの学校が、何で急に茶髪全面禁止にしたの?っていうのは不思議ではあるけどもさ。まー、今までが緩すぎたからどっかから指導が入ったのかもしれんし。茶髪金髪にしてた奴らからはぶーぶー文句出ただろうけど、私らには関係ないしね」 「髪の毛染めるの面倒くさいもんねー。あたしのお姉ちゃんも染めてたけど、すぐプリンになっちゃってて手間かかってたからあたしはいいやってなってた」 「身近でやらかした人がいると、自分は染めたくなくなるよね」  あはは、とミナちゃんと二人で笑い合う。  ちなみに私の身近で髪の毛を染めようとして大失敗したのは母である。彼女はロックバンドの影響で金髪にしようと突然思い立ち、買ってくる色を間違えるという超初歩的なミスをやらかした。一体何をどう間違えたら、緑色の染色料を買ってきてしまうなんてことになるのか。むしろよくそんな色がスーパーに売ってたなと思ったほどである。  まあ、そんなわけだから、私もミナちゃんも髪の毛の色は地毛のまま。頭髪検査が厳しくなったと言われても、だから何?くらいなものだったのだが。  問題は、そんなごく一般的な校則ばかりではなかったことである。  やれ、スカートを切った人間は買い直せとか(うちの学校のスカートは裾に校章が入っているからそうそう切れないのだが、それでも切っている人がいないわけではなかったのである)。  学校に漫画を持ってくるなだとか。  そういう、ちょっと厳しいけどありがちっぽい校則に混じって、まるでおまじないとしか思えないような妙なものが増え始めたのだ。  例えば、教室の窓。  何で“窓を開ける時は、必ずおじぎをして、両手を合わせてから開いてください”なんて意味不明な校則ができたのか。  はっきり言って何のためにあるの?という話である。まるで窓の外に見えない神様でも浮かんでいるようではないか。
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