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梨花の見るところ、蘭のほうが自己主張の強い性格のようだ。航は言葉も遅かったし、時々不安を感じるほどおっとりしているが、今まで健診で問題を指摘されたことはないから大丈夫だと、何度も自分に言い聞かせた。一体、誰に似たのやら、といつも不思議に思う。
「じゃあ、蘭がもらったのも?」
蘭がゲットしたのは戦隊ヒーローのフィギュア。おそらく鮮やかな配色が気に入ったのだろう。これも、誰に似たのか。
「そうよー。言ったでしょう、ママ。これはパパとママからだからね、って。忘れちゃった?」
また唇を突き出す。
「でも、ママもおしごとするんでしょ。だったらこんどのお誕生日は、ママからのプレゼントだよね」
「さあ、それはどうかなあ。ママがお仕事しても、お金はたくさんもらえないから、蘭がすごーくたかーいものをおねだりしたら、やっぱりパパにお願いしなきゃいけなくなるかな」
「いやだ…………」
ケーキを大事そうに少しずつフォークで口に運びながら、どきりとするほど硬い声で言った。
「どうして」
「パパ、きらい…………」
「そんなこと言わないの……。ああ、航ちゃん、クリームでテーブルに絵を描かない」
蘭はちょっと早いな、とその時、梨花は思った。女の子は思春期になると父親を忌避するようになるものだということは、自分を振り返ってみてもよくわかる。しかも、日ごろあまり接する時間のないふたりだ。これについてはわたしにできることはほとんどないと、あきらめるしかなかった。
でもあの時、きらいな理由だけでも聞いておけばよかったと、あとで梨花は後悔することになる。ただ、それを知っていたからといって違う結果が待っていたわけではない。ショックアブソーバーを得た程度のことだ。
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