835人が本棚に入れています
本棚に追加
明日は日曜日だけれど、子どもたちをちゃんと起こして、朝食を食べさせて、いつもと同じ顔をして、掃除に洗濯。天気予報はどうだっただろう。お昼は軽めにしなければ。ケーキの残りをデザートにするから。
いや、今はそんなことは考えなくていい。ちゃんと睡眠を取ることが優先だ。
ゆっくりと身体を起こし、横の気配を窺いながら、掛け布団だけを持ってリビングに出た。
ソファは3人掛け。低い座面の下に隠れているベルトを引き、背もたれを倒すとベッドになる。下部の収納には客用の枕も入っている。
でも今夜はそれも煩わしい。クッションで代用する。
再び横になると、胸のなかに詰まっていた汚れた空気が一気に抜けていくような感じがした。
ああ、これで眠れそうだ、と思った。
その夜以来、梨花は隆之がいるあいだは、必要なものを取りにいくなどということがないがぎり、夫婦の寝室に足を踏み入れなくなった。入る時には必ずノックをする。
そうなっても隆之は何も言わなかった。
あの翌朝も、うっすらと夜が明けはじめた時刻に起きだしてきて、ソファを一瞥しただけだった。
起き上がった梨花が「ご飯は?」と訊くと、「いや、いい。あ……、コーヒーだけ淹れて」と洗面所に向かった。
本当にゴルフなんだ、と無感情に考えながらコーヒーメーカーをセットした。
最初のコメントを投稿しよう!