落花流水

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「ふふっ」  こんなに余裕がない如月もはじめて見た。  いつも人の事、からかってばっかだったのに。 「はい。あげる」  鞄からそっと取り出した不細工なラッピング。  割れないようにと慎重に包んだそれは、ちょっとかさばってしまっている。  でもいいの。今日のために、慣れない調理器具と悪戦苦闘したんだから。 「食べていいか?」 「え?やだ。帰ってからにして。下手くそだもん」 「気にしないのに」  如月は少し落ち着きを取り戻したみたい。  わかった。如月は自分が動揺しないように、先手を打ってたんだ。  照れ臭くて、言えない言葉を誤魔化した。  そんなところが、かわいいとも思う。  でも、ズルい。  逃がしてなんてやらないんだから。 「私が嫌なの……ねえ、如月?」 「なんだよ」 「好きだよ」  そうして私は、自分のネクタイを外した。  
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