アルエットとオルカ

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そんな彼をボクはただ見ているしか出来ず、言葉なんて到底かけられなかった。だから、オルカはボクの事を何時だってこう呼ぶんだ。 「…欠陥人間。」 小さく低く少し怒った声で言った。何時もボクに対して怒った時はそう呼んでくる。ボクは小さな頃からそう呼ばれていた。昔は傷付きはしたけれど、ボク自身もそう呼ばれることに今は少なからず納得してしまっている。ボクは、普通の人間とは違う。ボクは、普通の人より色んなものが欠けてしまっている。だから、そう思われるのは仕方ない事だしそう言われても可笑しくはない。でも、だけど、いくら自分が納得してしまっているからと言って久し振りにそんな事を言われてしまってはボクだって泣いてしまうじゃないか。そう言わせてしまったオルカにも情けなくて仕方がなかった。 「……ごめん。オル。ボクは、キミがどうしてこの計画を知っているのか分からなくて混乱してるんだ。そして、どうして此処にキミが入ってこれたのかも分からなくて」 ボクが思っていることをオルカに打ち明けると、オルカは溜め息を吐いた。そして、ボクの手にそっと触れた。ボクは其れが嫌で振り払おうとするもオルカの力は強く振り払うことは出来なかった。じっとオルカを見れば苦しそうにボクを見つめこう言った。 「……まだ、潔癖症治ってねぇんだ。…そう、だよな。外で何を触ってきたか分からない様な手で触られるなんて嫌だよな。ごめん。」 手を離すオルカの顔をずっと見ていたら、小さく微笑みかけられた。ボクは、頭に疑問符を乗せ首を傾げた。 「…、アル。もうここには来ない。だから、最後に教えてやる。俺が誰にこの計画を教えてもらったのか、どうして俺が此処に入って来れたのかを」 真剣な瞳で見詰められると、ボクはただ静かにその話に耳を澄ませた。 「まず、俺にこの計画を教えてくれたのは紛れもないお前の親父さんだ。何故俺にその話をしたのか理由は教えてはくれなかったが、お前を助けて欲しいと言われた。だから俺は此処に来た。そして、俺がどうやって此処に侵入できたか。それは一度俺達は此処に遊びに来たことがあるからだ。アルがうんと小さい頃だから覚えてないのは無理もないと思う。…この建物の外に置いてあるプランターの下にスペアキーを隠してそのままだったんだ。それを思い出してこの中に入った。」 「……ボクの、父さんが?……ボクとキミが此処で遊んだ?」 「…それじゃ」 余計に混乱しているボクを余所にオルカは早々に出て行ってしまった。本当にもう此処には来ないのだろうか。もっと沢山聞きたい事があるのに。またボクは一匹でこの鳥籠に居なくてはいけない。そう思うと涙が出てきた。 オルカがもう此処に来ないのならば、父さんに聞くしかない。それはとても勇気のいる事だろう。だけれど、ボクは知らなくてはいけない。この計画の目的を。 end?
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