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いつもの場所で
夕空から夜空に変わり、無数の星が花街に華を添えた。
あるものを買って、言われた小川に足を運んだ。
「澪様……」
後ろから落ち着いた色気のある声で呼ばれ、振り向くとそこには麗花魁が佇んでいた。
「花魁っ……」
「お約束を守ってくださったんでありんすね。まさか、来てくださるとは」
「守らない訳がありません」
「今宵も麗しきお姿で。ご令嬢達が虜になるのも、ようわかりんすわ」
はっきりとした緑色の着物に、桜風が描かれた打ち掛けを纏う姿に、つい魅了されてしまった。
伝えなければ……
「花魁、手を出してください」
「手?」
「ええ、私からの贈り物です」
そう言い、手のひらに置いたのは鮮やか紅色の口紅だった。
「口紅……」
「私の想いを受け取ってください。必ず、幸せにします」
「――澪様が愛されているのは、、桜花じゃ……」
「いいえ。愛するのは、ただ貴女1人です」
「澪様っ――」
大粒の涙が頬に流れ落ちる。
「わちきも……愛してやす……」
口紅 あなたの唇が欲しい
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