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麗花魁
「麗花魁!! そろそろ、髪結いさんが来る時間でありんす!!」
幼い花魁が障子を除き、告げた。
大きな花の着物と、簪を付けたその姿、禿自身の支度は終わった様子だった。
「あら、ありがとう。夕顔は?」
「後で来るって。そら、来んした!」
「花魁~!! 髪結いさん、連れてきんした。わっち達も手伝いんす」
「ありがとう。じゃあ、化粧箱から口紅を取って頂戴」
「はい」
花街の一角に設営された紅葉賀屋は、今一番人気の花魁を育て上げた店として有名であった。
その花魁とは、麗花魁。幼い頃に紅葉賀屋へ売られ、15歳で遊女に。そして、18歳で花魁となった。
紫光りする黒髪に、柔らかな白肌は見る者を魅了し、全てにおいて優れていたのが麗花魁。
教養高く、芸事に才能を開花させ、まるで若紫の生まれ変わりのようだと有名であった。
花魁にもなり、禿から慕われた麗花魁だったが、ある日を境に少しづつ歯車が狂い始めた。
その歯車で狂わされた先は、幸福か、はたまた不幸か。
これは、1人の花魁の物語――
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