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1. 夏の想い出
幼い頃、私は東北の田舎に行くと、蝉の抜け殻を集めてはお墓を作っていたらしい。
蝉が羽化し脱皮したあとで、別に死骸でもないのに、抜け殻を集めては庭に埋めて枯れ枝で墓標を建て手を合わせていたという。
高校二年生になった今年の春、東北の従姉が大学進学で上京し、うちに遊びに来た時にそんな話を聞いたからか、時々、当時のことを夢で見るようになった。
それは私が幼稚園の年中の夏休みの出来事、ずっと忘れていた記憶だ。
私の母は私を産んですぐに亡くなっていて、我が家は父子家庭だった。それで父は夏休みや冬休みなど長期休みになると、私を母の実家である東北の祖母の家に預けた。
祖母の家には母の兄一家がいて、少し年上の従兄姉のお兄ちゃんとお姉ちゃんが遊んでくれるので、私はその時も大喜びで出かけて行った。
父は仕事があるので祖母達に私を託すと「八月の終わりに迎えに来るからね」と言って東京に戻った。
東北とはいえ真夏は暑い。
午前中、外で遊びお昼を食べたあと、従兄姉達は小一時間程、学校の宿題をするため自分の部屋へ引っ込んだ。
彼らの宿題が終わるまで、私は祖母とお座敷へ行くのが日課だった。
お座敷は広い庭に面していて、その縁側の板張りの床が冷んやりとして気持ちが良く、座布団を二つ折りにしたのを枕に昼寝をした。
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