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危機(side:f)
「また世界の危機かぁ」とフォースが長い袖をぶんぶん振っている。
「いつも大したことないのに」と僕は肩をすくめる。
「今回は博士の声、本気でしたよ」と先頭を歩くハンドレッドが真面目な声で言う。
深夜、頭上に満天の星、そしてゆらめくオーロラ。見渡す限りの雪原を踏みしめ、僕達は博士の元へと歩く。
やがて見えてきたのは半球状の巨大な建物――ハル博士の研究所だ。
僕らはそろって足を踏み入れる。
通路内は摂氏20度。ここに1人だけ存在する、人間のための温度。
黒い空間、時空移動ホールへたどり着く。
「ハール、来たよー」とフォースがまのびした声で言った。
無数のデータを前に腕組みしていた博士、ハル・ウィリアムズが振り向く。勢いで白衣がふわりと宙に浮いた。
「やあ、来たね。
今回も世界を救うため、君たちの手を借りるよ」
「はいよー! 僕ちゃんがんばっちゃうよん」
フォースは袖をふる。
「Yes,My Lord。仰せのままに」ハンドレッドが仰々しくお辞儀をして、残った僕は「それなりに頑張るよ」と言う。
三者三様の返事に、博士は微笑んだ。
「頼んだよ」
西暦2123年2月14日午前1時。
地球に巨大隕石が衝突する1時間前。
僕達は博士の元に召集された。
そして、ここから過去に飛ぶ。
ただ。
僕は内心、思っていた。
世界の危機なんて、救わなくてもいいんじゃないかって。
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