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私は瞬きした。
なんだかずいぶん長い間、夢でも見ていたような……。
スマホを見て、ギョッとした。
「うそっもう1時間も経ってる! どゆこと!?」
確か、誰かを追いかけてこの広場に来た気がしたけど……誰を追いかけてたんだっけ?
おまけにスマホにはヒロトから山のようにLINEと不在着信が入っていた。
「ええ?」
慌てて中身を確認しようとした時。
「雪乃! やっと見つけた!」
「ヒロト……」
ぜぇぜぇ、と肩で息をして、いつもセットしてる髪も乱れて。
ヒロトが私の前まで駆けてきて、立ち止まった。
「雪乃、ごめん、俺照れくさくて、どうしても自分から言えなくて……ちゃんと言えばよかった。
吉岡のことなんか気にせずに」
「吉岡君?」
どうしてそこで吉岡君が出てくるんだろう。
だけど些細な疑問はヒロトの真剣な眼差しと言葉でかき消される。
「高校入ってから、いいやずっと前から、雪乃のことが好きだった!
付き合ってくれ!」
その言葉はまるで矢のように、私の心を射抜く。ヒロトとの思い出がよみがえって、胸がいっぱいになる。
「あのね、ヒロト、私も……」
私は返事の代わりに、チョコを差し出した。
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