結果(side:f)

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 雪乃はもう天に昇っている。  いや、おそらくあの場にいた全ての人が。 「フィフ」  振り向くと博士がいた。  昔のイヌイットのような服装。顔周りまで毛皮で覆われている。 「考え事かい?」  (うなず)くと、博士は無言で続きを(うなが)す。 「今回初めて人と話して、他にいくらでもやりようはあったのに、僕は雪乃の気持ちを尊重したくなった。  僕の言葉で彼女の反応がころころ変わって、『この子には幸せになってもらいたいな』って初めての感情を(いだ)いた。  これが人と関わるってことなんだね。  時空移動をする前は、ネガティブなこと考えてたのに」 「『世界の危機なんて、救わなくてもいいんじゃないか』って?」  僕は博士を無言で見つめた。何ら不思議なことではない。  僕達の思考データは博士の手の内にある。 「僕も、そう思う時があるよ」 「博士」  目を見張る僕に構わず、博士は続けた。 「『正しい歴史』なんて言って、本当は僕のエゴにすぎないんじゃないかって。人類の寿命を延ばしたいがための措置だけど、そもそもこの星ですら宇宙には必要ないかもしれない。僕は神ではないし、考えたらキリがないだけど……」 「でも僕は、博士に作られてよかった、って思うよ」 「……」 「雪乃とも話せてよかった。感謝してる」 「そうか」  二人ともしばらく黙った。   「……博士、チョコって食べたことある?」 「あるよ。でも長らく食べていないな」   雪乃からもらったチョコは時空移動で消えた。だが、原材料と作り方は僕の媒体に記憶されている。 「今日はバレンタインだから作るよ。愛をこめて」  雪乃と話した今は、人類一人一人を愛しく思う。  僕は何度でも世界のために、時空を飛ぼう。  作り物の心にそっと誓い、僕は博士に微笑んだ。
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