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「あ……」
そこから言葉が出なかった。
同い年くらいの男の子。さっきの日本語が嘘のような彫りの深い顔立ち。青い瞳、色白で銀髪で、お人形みたい。
何より着ているものが異様だった。
前にテレビで見た、パリコレ春コレクション。
襟が大きくて、斜めにブランドロゴが入っている、銀色で光沢のあるつるりとした素材で――とてもじゃないけど普段着ではなさそうなそれを、目の前の彼は着こなしていた。すごい。すごいけど、近づきたくないタイプ。
でももう、関わってしまった。
頭の中が真っ白になる。
絶対お金持ち。絶対セレブ。もしくは親が大っぴらにできない職業の人かも。ぶつかった賠償請求とかされたらどうしよう。女子高生が大金をゲットできる仕事ってあるの? マグロ漁船とか?ああでも私船酔いするんだっけ、などと考えていると。
「あんた……」
彼が私の顔を覗き込んできた。とんでもない美形だけどこのシチュエーションだと怖い。
「うわぁすみません、あのあの、これでどうにか見逃してもらえないでしょうか!?」
私は地面に散らばった荷物の中からとっさにチョコを突き出す。
ミカからの友チョコ。ごめんねミカ。
「……」
「あの、ダメでしょうか?」
彼は不思議そうな顔でチョコを受け取り……真顔で口を開いた。
「あんた、俺が見えてるのか?」
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