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「助けて……くれ……」
伸ばした手が震えている。
ちょっとだけ迷った。
けど私の体は動いていた。
「大丈夫!?」
何かできる、と思ったわけではないけど。
とっさに彼の手をとると、その人は半透明から普通の状態(?)に戻った。はぁあ、と同時に大きなため息をつく。
「サンキュ。
あっぶね、マジ消えるかと思った」
どゆこと?
私、夢でも見てるのかな?
頬をつねっていると「なにしてんの」とツッコミが入った。
痛みもあるし、まばたきしても彼はそこにいるし。でもこれだけのことが起こったのに、周りの人にはまるで彼のことが見えてないみたい。
「あんた、名前は?」
「……笹島雪乃」
「雪乃ね。ちなみにあの少年に何しようとしてたんだ?」
「チョコを渡して……告白を……」
次々来る質問に、流れで答えてしまった。
ふうん、と男の子は口元に指を当て、考え込む仕草。
絵にはなるけど、なんだろうこの微妙な雰囲気。
「雪乃、悪いけどちょっと頼みがある。
もう1回ヤツに近づいてくれないか」
なんで、と思ったけどあまりにも目が真剣で。
訝しながらも私はその通りにした。
二、三歩進んだところで今度は「戻ってこい」と声がかけられる。
振り向くとやっぱり男の子は少し透けていた。
頭がおかしくなりそうだ。
おまけにびしっ! と指までさされる。
「間違いない、あんたが鍵だな」
「何言ってんの? どういうこと? 頭だいじょうぶ?」
彼は私のツッコミをことごとくスルーした。
「雪乃。申し訳ないけど、あんたがあの少年に告白すると」
「告白すると?」
「世界が終わる」
「…………は?」
開いた口が、ふさがらなかった。
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