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フィフティ・フィフティ(side:f)
「え、君アンドロイドなの?」
「そうそう。名前はフィフティ・フィフティ」
「ふううううん。へええええ」
僕は再び後ずさる雪乃の肩を押さえた。
ベンチに座り、改めて説明を試みる。
昔の人間と話すのは初めてだ。
フォースは一番人に近いタイプのアンドロイドなので積極的に人間とコミュニケーションして性格をアップデートしている。機械らしさを求められるハンドレッドは人から認識されない。
僕、フィフティ・フィフティは二人のちょうど中間タイプだけど、これまで存在を認識されることはなかった。
「話してて楽しい人間とは、きっと縁があるんだよ!」
フォースの言葉が頭をよぎる。
不思議に思いながら、僕は雪乃に改めて自己紹介することにした。
――僕は百年後の未来から来たアンドロイドで、この時代、君の行動を少し変えることで、未来の世界の危機を救うことができる。
説明の証拠に、僕は手首から先を外して見せた。
この時代にはない機械の形状、きらきら光る情報伝達物質を目にして、彼女は一応納得したようだった。
「名前、長いからフィフって呼ぶね。
ツッコミどころはいっぱいあるけど、とりあえず、その服、私からすれば全然溶け込んでないよ」
えっ、と僕は全身をチェックする。
「テレビで勉強したのに」
「落ち着かないから他のにしてくれない?」
他の人には見えてないんだからいいじゃないか、と思いつつ、僕はその辺を歩いている学生の制服をスキャンして姿を変えた。
雪乃は少し落ち着いたようだった。
「つまり、私が吉岡君に告白すると、未来が変わってしまうってこと?」
「飲み込みが早くて助かるよ」
「SF映画みたいな感じかな。正しい未来に変えた後に私の記憶を消して、フィフが元の時代に帰る、的な?」
「理解が良すぎて怖くなってきた」
なかなか良いところ突いてくるな、昔の映画とやらは。
「ちな世界の危機って、どんな?」
「おすすめメニューを聞くような気軽さだな。
……機密保持のため、教えられない」
「ええー」
雪乃は大きく仰けぞる。変なやつ。
「そんな、世界の危機と、いたいけな十代の美少女の薔薇色の未来を天秤にかけろだなんて」
「美少女自分で言うか。あと天秤に載せるまでもなく世界の危機を救えと言っている」
「冗談じゃないわ!
私ぜったい告白するんだからねー! っだ」
あっかんべーをして吉岡君へと歩き出す笹島雪乃。
僕は彼女を羽交い締めにした。
「ガキかよ」
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