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動揺(side:y)
「レディーに対してガキとは何よ、ガキとは」
私はほっぺたを膨らませてフィフにつっかかる。拘束解除されたものの、彼が私を見る目は冷たい。
「なあ、あいつじゃないとダメなのか?」
「はぁ? 何その少女漫画で使われそうなセリフ……はっ! キミまさかこの私に惚れちゃったりなんかしちゃったりして」
「んなわけあるか。
ただ、雪乃があいつに告白しようとしたら僕の存在が危うくなる。未来に繋がる歴史のずれが生じるんだ」
私はきょとんとした。
「え? 私、フィフとどこかでつながりがあるの?」
「可能性はある。
で、改めて聞くけど。
付き合うのも、結婚するのも、あいつじゃないとダメなのか?」
「……」
一瞬、なぜかヒロトの顔が浮かんだ。
私は頭を振る。
なに考えてるの雪乃。
「あいつを好きになったきっかけは?」
「――吉岡君、私が科学雑誌読んでるのを『かっこいい』って言ってくれたの」
「……」
今度はフィフが沈黙する。
「昔から私、機械とか宇宙とか、理系方面が好きで。ほら、普通そういうのってあんまり女子は好きじゃないイメージあるじゃない。
家族や友達は受け入れてくれてるけど、それ以外の人には『頭いい子ぶってる』とか『勉強できますアピール?』って言われることもあって……」
私はうつむく。
「だから『かっこいい』って言ってくれて嬉しかった、かな。
その一言で舞い上がっちゃって。
吉岡君はイケメンで誰にでも優しくて、みんなの憧れで。
私も憧れですませるつもりだったけど。
ミカが、バレンタインに彼氏にチョコ渡すって言ってて、うらやましくなって。
私だって、いっつもお父さんやヒロトに義理チョコ渡してばっかじゃなくて、誰かに本気チョコ送りたいな~ってぼんやり思ってたら、ヒロトと……喧嘩して」
そこで私の言葉は途切れた。
あれ?
微かな違和感。
「ヒロトって?」
「私の幼なじみ。高校入ったらデビューのつもりなのか、急によそよそしくなって。でも最近『今年もチョコくれるんだよな?』って必死になって聞いてきて。それがしつこくて喧嘩して……」
私は昨日の放課後、教室でのやりとりを思い出す。
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