動揺(side:y)

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 フィフの言葉を思い出す。 「付き合うのも、結婚するのも、命をかけるのも、あいつじゃないとダメなのか?」  結婚も、命がけも、まだピンとこないけど。  私は吉岡君に「かっこいいね」って言われて嬉しかった。  憧れの人で、皆の人気者で、あわよくば付き合いたかった。  でも気持ちを伝えて、笑顔になってもらいたいのは――ヒロトだ。  本当は今までみたいに仲良くしたいって、ずっと思ってた。  その時。 「笹嶋さん?」  はっとして声の主を見る。そこにイケメンのまぶしい笑顔。 「やっぱり笹島さんだ。奇遇だね」  吉岡君がいた。  フィフを見ると、びっくりして固まっている。半透明になってない。 「奇遇……だね」  座り直すと、リュックの中のチョコが小さくがさり、と音を立てた。
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