流星群〜番外編〜

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颯は意識を回復してから、いつ声をかけてもボーッとしていて心ここにあらずの状態だった。担当患者だから、心配というのはあったけど、それ以上に、5歳ほどしか年齢が変わらない颯の突然の不幸に、湖城は胸を痛めていた。だから、何とか力になってあげたかった。同僚の真崎朝也には、よく患者にのめり込み過ぎると言われていたけど、それで困ることはなかった。 朝也は、同じ年に今の外科に配属された同期であり、年齢も一緒で、尚且つ数少ない男性の看護師ということで連むことが多かった。朝也は、面倒臭そうにする事が多いのだが、しつこく付き纏っていたのだ。ただ、性格は真逆で湖城とは違い、効率重視で側からみると、あっさりし過ぎて冷めてるようにも感じる。周りからは、湖城と朝也を足して二で割ったら丁度いいとよく、揶揄われる。 流星群を見に行くために朝也に協力を仰いだときも、やはりいい顔はされなかった。でも、朝也も颯のことは気にしていたことも知っていた。だから、しかめ面で文句を言いながらも協力してくれた。 星を見に行った次の日、軽く仮眠と着替えをして出勤すると、朝也が睨みながら寄ってきて小声だけど耳に突き刺さるように呟く。 「昨日、予定を大きく変えやがって、もう少しでバレるところだったんだぞ」 「悪かったよ。でも、助かった。今度、なんか奢るから」 昨夜、帰り際に泣き始めた颯が落ち着くまで、しばらく待っていたから、当初予定していた戻る時間よりも大幅に遅くなり、朝也と一緒に夜勤をしていた井口さんを誤魔化すために、朝也はかなり頑張ってくれたようだ。 看護主任のミーティングをしますという声かけに、朝也はクルッと背を向けたけど、一瞬止まって呟く。 「さっき、検温しに行ったとき、少しいい顔してたよ。まぁ、目は腫れていたけど……泣かせてあげれたんだな」 そう言うと、湖城の反応も聞かずにサッサと行ってしまう。 朝の業務の合間に、颯の病室に行くと珍しく寝息を立てていた。昨日、少し無理をさせてしまったかなと思ったけど、今までよりずっといい顔をしていて、その顔に見入って、髪の毛に手が伸び軽く触れる。その時颯が「んっ……」と顔を動かしたので、起こしたかと焦って手を引っ込めた。だけど颯は起きることなくまだ、心地よく眠っていて、そっと病室をあとにした。
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