2 再会〜疑似恋愛契約〜

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2 再会〜疑似恋愛契約〜

 六花の心はどん底に落ちていた。まさかキラキラで華やかなクリスマス当日にこんなことになるなんて思わなかった。  でもクリスマス予定が入ってなかったわけだし、それがこの結果なら頷けるかしら。  キャリーバッグにはしばらく生活出来るだけの衣類などが入ってる。とはいえ、住む場所をなくしては生活だってままならない。  ホテル暮らしにしたって金銭面で底をつくのはわかっているし、だからと言ってネットカフェに入り浸るわけにもいかない。  もうあの部屋には戻れない。早く部屋を探さないと……六花は涙が出そうになるのをグッと堪えた。  キャリーバッグを引く音が悲しく響く。行き交う人には旅行客か、旅先から帰ってきたばかりの人に見えるだろう。でも現実はそうではなかった。  同棲を解消して別れたばかりだなんて惨めすぎる。こんなはずじゃなかったのにな……私の考えが甘いのかなーー今更考えたところで時間は戻って来ない。  とりあえず明日も仕事だし、今日は近場のホテルに泊まるしかないかな……。  六花は歩道の端に寄り、既に閉店時間を迎えた店の壁に体を預けると、コートのポケットからスマホを取り出して近場のホテルを調べ始めた。  とにかく安い所がいい。シングルルームで、連泊が出来ると助かるんだけどーーそう思いながら画面をスクロールしていると、スマホにメッセージが届いたことを知らせる音が響く。  それは高校・大学と親しくしていた知世(ちせ)からだった。彼との関係を以前から相談していたこともあり、彼女には知らせておかなければと連絡をしたのだ。 『そっか。とうとう別れたのか。今どこにいるの? 行く場所がなければうちに来る? 話も聞くよ』  知世からの温かいメッセージに感謝をしたが、明日も仕事があるし迷惑はかけられない。 『ありがとう。会社の近くに来てるから、近くでホテルを探すつもり。今度話を聞いて』  こうして心配してくれる人がいるって、すごくありがたいこと。一人じゃないって思えるから……再び音が鳴り、知世からメッセージが届く。 『わかった。でもうちは迷惑ではないからね。いつでも連絡して』  大学を卒業してから五年。彼女との関係が途切れなかったことに感謝しかなかった。
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