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「話を聞いている限り、私は貴島さんが六花さんに夢中で、大好き過ぎて抑えが効かなくなっているように思えるよ。二人の始まりに朝夏さんっていう存在がいるから気にしちゃうのかもしれないけど、もっと自分に自信を持っていいんじゃないかな」
「で、でも……子どものことは……? 私を好きでも、子どものことをどう思うかわからないでしょ?」
六花が悲しげな顔で愛生を抱き上げる。こんなに可愛い子を否定してほしくない。
母親の様子に気付いたのか、愛生は笑顔を向けながら何かを必死に話そうとする。その姿が愛おしくて、さらに強く抱きしめた。
「うーん、確かにそうだけど……。でももしかしたら、六花さんが気負わずお試し期間を過ごせるように、わざと言った可能性もあるよね」
「わざと……?」
「そう。貴島さんって相当な口下手みたいだから、これは私の憶測だけど……友だちとしてでもいいから六花さんのそばにいたかったんじゃないかな。子どもイコール体の関係は必須でしょ? そんなものはなくてもいいからっていうアピールなのかなぁって思っちゃう。なんだか私はその気持ちがわかるような気がする」
萌音は何かを思い出したかのように目を伏せ、うっすらと笑みを浮かべた。
「私もお見合いの相手が翔さんだって知らなかった時にね、彼のことが本当に好きでどうしたらそばにいられるのかって悩んだから……。もし私の前から突然翔さんがいなくなったらなんて、考えるだけでも涙が出そう」
萌音の言葉を聞いて、六花はハッとした。確かに逆の立場になった時のことを考えなかった。好きな人がーーもし宗吾が突然目の前からいなくなったらどう思っただろう。
妊娠をしていなかったとして、仲良く過ごしていたと思っていたのに、彼が置き手紙を残していなくなってしまったら、きっとどん底に突き落とされたような気持ちになったかもしれない。何がいけなかったのかを毎日考えては、答えが見つけられずに空虚な時間を過ごしたかもしれない。
宗吾はそんな気持ちになっていた? もしそうなら私は何てことをしてしまったのだろうーーでも今更後悔しても遅い。
私は自分のことしか考えてなかったのかもしれない。あの時は元カレと別れた直後だったし、宗吾の気持ちより自分を優先してしまっていた。だってまた傷付くのが怖いから。それが宗吾を傷付けているとも知らずに……。
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