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システムエンジニアとして働き始めて三年目。僕の席の隣には、ひとつ上の先輩の比奈さんが座っている。
小柄な体に、大きな瞳の色白な童顔が乗っかっている。黒髪のショートに、いつも白い髪留めを着けている。年上とは思えない可愛らしい見た目のせいで、最初に会った時には誰かの娘さんが来ているのだと思ったものだ。
その風貌から、同僚の間では、密かに妖精などと呼ばれている。しかし、僕の中では彼女は妖精というより、猫だ。
彼女は、猫みたいなくしゃみをする。
「くしっ」
僕は、それを聞くたびに、かつて飼っていた猫のゴロウのくしゃみを思い出す。音の感じがそっくりなのだ。
しばらく近くにいた僕は、彼女のくしゃみには法則があることに気づいた。
彼女はなぜか、毎日決まった時間にくしゃみをする。
午前十一時五十七分。これは昼休みの三分前なので、お昼時の合図として丁度良い。
次に、午後五時二十七分。こちらは、定時終業の三分前。
毎日同じ時間となれば、そこには何か秘密があるはずだ。だが、僕は比奈さんに聞くことは絶対にしない。彼女が意識してしまって、くしゃみをしなくなるのは嫌だからだ。
彼女のくしゃみは、なんというか、とにかく可愛らしい。ゴロウを連想するせいもあるが、仕事中のひとときの癒しなのだ。
今のところ、社内で彼女のくしゃみに気づいているのは、僕だけだ。
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