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「実はね……私が好きだったのは悟じゃなくて、遥香だったの」
「えっ?ちょっと待って。なら、なんで悟が好きだなんて」
「それは、遥香の気持ちを知りたかったから。どんな反応するかなあって。いきなり、遥香に好きって言っても取り合ってもらえない気もしたし……」
う〜ん、どうなんだろう。ストレートに雪乃から好きって言われて私はどうしたんだろう?そんな思いを巡らせていると、悟が追い撃ちを掛けた。
「俺も雪乃と同じ……遥香が好きだった」
「えっ、えっ?!ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ」
私の頭の中がとっ散らかってきた。
「悟の嘘の理由は何?」
「そこも勘違いなんだよな。俺は10年前、遥香に告ろうとしたんだ」
私は遠い日のことを思い出そうと集中したけれど、悟は雪乃が好きだと言ってたとしか……。
「俺は、『マジ、間野が好きだ』と言おうとしたら、おまえが早とちりして勝手に盛り上がって、こっちは恥ずかしいの堪えて告る決心したのに。もうなんも言えなくなったってわけ」
えっ?えっ〜〜〜!!
てっきり、まじまって言ったんだと。私の苗字は間野。雪乃に初めて出会ったときにお互いの苗字が似てるねって話をしたことを今さらながらに思い出した。
「それから、遥香は即私たちをくっつけようとしたでしょ?私は遥香から、山之内くんも雪乃が好きなんだって、って聞いて。それ違うなってすぐわかったし。彼の真意を聞き出さなきゃって思ってお茶することになったの。だって、下手すりゃ恋敵になるわけでしょ?まあ、それを遥香はデートだと思ってくれてたみたいだけど。
思ったとおり、山之内くんは遥香が好きだった。恋敵でも好きな相手は同じだから、遥香のどんなとこが好きだとかって話で盛り上がって意気投合しちゃったのね。
で、こうなっちゃった」
雪乃は大きなお腹に手を当て、苦笑いした。
「私の気持ちは知りたくなかったの?」
「まあ、そこはどっちでもよくなったってことだな」
確かに、私はふたりのどっちも選べなかっただろう。ふたりとも私の大切な親友なのだから。
「でも、このタイミングはなんで?」
「そりゃあ、この子ももうすぐ産まれるし、遥香の誕生日だし。それに……」
ーピンポーンー
「ごめん、鍵忘れちゃって。ああ、ふたりが山之内ご夫妻だね。初めまして。来週の結婚式はよろしくお願いします」
END
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