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まずい、やばい、おかしい。
机の前には貼ってあるんだ。ちゃんと2週間分の勉強計画表。そりゃあきれいに字を揃えて、蛍光ペンで色分けして、完了したらチェックする欄まで作った。
その最終日なのに。何でひとつもチェック入ってないんだ!
明日でいっか。余裕持って作った計画だし。1日くらいずれたって。今日は忙しいからパス。
――とか何とか言って先延ばししてたら、試験明日だよ!!
目を三角にして教科書とにらめっこ。暗記は苦手。だから何度でもつぶやかないと頭に入らないあたし。
いいやご臨終平家は壇之浦。いい国作ろう鎌倉幕府。人に不意打ち承久の乱――どんがらがっしゃん。
どんがらがっしゃんかまくらばくふ……いや違う。
「おっかしいな、天ぷら鍋はこの棚に入れたはず……なのに何で片手鍋が降ってくるんだ!?」
あたしはゆっくりとため息をついた。
これだ。これなのだ。試験勉強が遅れる最大の理由。
「ねえ梓! 鍋知らない? ああそういえばコップ割れたから買おうって言ってたよね! 今から行く? そうそう商店街の福引やってるんだわ! でねえ、梓――」
あたしはぴしゃりと襖を閉めた。でも日本家屋ってのは、閉め切っても音は筒抜け。
ああまたテレビのバラエティ流してる! あれあたしも見たいのに。いやテストは明日。気が散る。気が散る。気が散る。
どたどた。ばたばた。ぎぎぎ。
お姉ちゃんてば、足音も、物の上げ下げも、扉の開け閉めも全部うるさい。
るるる……
声もでかい。鼻歌がテキトー。
そんなガサツなお姉ちゃんが、あたしの唯一の家族で。だけどひとりで百人分のにぎやかさで。おかげでテスト結果はいつも、……あははだわ。
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