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EP1.人生初眼科
ふと気が付けば
「俺は小説家になって故郷に錦を飾る日が来るまでは利根川を渡って田舎に帰ることはねえぜ」
と息巻いて、当時していたエッチな雑誌の編集を辞め、その仕事で知り合いになったライターの母校である大阪芸大に進学するために関東を離れ、流浪の小説家(自称)となってから、(自称)が取れぬまま早くも三十年が経過していた
今ではすっかりと、経済的には小説で一文も稼ぐことが出来なくても小説家として生きている一人のそれなりの大人にな
……れたかはともかく、
「ちゃうちゃうちゃう?」「ちゃうちゃう、ちゃうちゃうちゃうんちゃう」を使い熟せる立派な関西人になり
「頭お○かしいんちゃう?」とか言われながらも、ド庶民の下衆な欲望におもねることなく純粋に文学と芸術に向き合い、まともな職につかぬまま、小説を書きつつ、不安定なアルバイトや古本屋、そしてここ十年ほどは警備員をして口に糊して小説家をしてきた
元々、頭と顔以外は弱いところばかりで(←自分で堂々と言うあたりをみるとおつむも弱いっぽい)、大病をしたことや入院を伴う病気にこそ罹ったことはなかったが、あちこちの調子が悪く、この四半世紀、年に一度くらいしか「今日はどこも調子悪くないぜ」と思える日がなかった
高血圧に片頭痛。肺には薄い影が映り、五十肩ってやつなのか手が痺れ、ちょっとした鼻炎で鼻水が出ればそれが喉に落ちて来てむせ返り、味覚異常で食パンをかじれば時たま砂の味がする。更に、自律神経がぶっ壊れてからは毎日耳鳴りにも地味に悩まされている
一言で「老化」と片付けてしまってはそれだけの事なのだが、ここ最近はそれらに加え、更に切実な変化に悩まされていた
……
かつて暴れん棒将軍と称され、ひとたび目を覚ませば、南河内一帯の風がざわめき、犬猫は鳴き叫び、鳥たちが北の空へと羽ばたき、そして乙女たちの胸を高鳴らせたという逸話を持つ、……私のぽこちんがおっきしなくなってきたのだ
このままじんわりと弱っていくのが生物的に正しいことなのだろうと思いつつも
未だ芥川賞はおろか、文芸誌の新人賞にも落選し続け、故郷に錦どころか世間的には小説家にすらなれぬまま
……なのはともかくとして、エッチなビデオでよく見る、エレクトするとおしっこ漏らしちゃう敏感な娘に囲まれたハーレム的なプレイがしたいという細やかな夢が叶わぬまま、大人から老人になっていくのかと思うと一抹の寂しさを感じる今日この頃、皆さま、いかがお過ごしでしょうか?←文体と共に精神も分裂してきた
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