ブランコと私

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 人と会わないと考えることもしなくなる。本能のままに生きていると、あれこれ惑わしいことで頭の中を騒がせなくなる。ただ誰もいない場所に腰を下ろして静かに過ごすこの時間は、一方で寂しさを覚えるがもう一方で日常を忘れさせてくれる。混沌とした世界は私には騒がしすぎる。時間を忘れて風に揺られるブランコと過ごすくらいが、私には丁度いい。  空いたブランコが温もりを保ったまま小さく揺れている。とても久しぶりに私以外の誰かに座られて喜んでいるように見えた。  「良かったな。」  私はそう声をかけた。  良かったよ。  ブランコがそう答えた気がした。
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