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住宅街の片隅にひっそりとある廃れた公園に住み始めて二日が経った。今回は一体何日いられるのだろう。気温の変化から察するに恐らく秋口であろう朝に目覚め、淵に植えられた草木の側から起き上がった私は随分固くなった身体を伸ばした。
人間は残酷だ。何処もかしこも誰かの土地で、勝手に住むことも許されない。土地を持ってる人間は皆金持ちで家がある。だから私のような一文なしの苦労も知らない。
そして人間は家のない私を軽蔑する。時に怖がる。親は子に、「あんな人とは関わっちゃだめ。」と言う。確かにそうかもしれない。金がないと、誰にでも物乞いをしてしまう。こんな私は子どもの教育には良くない。
以前は私も同じことを思っていたかもしれないのだが、今となっては記憶にない。
昔はよく公園で子どもがはしゃぎ回っていた。だが今はブランコを楽しむ子も少ない。いや、危ないからと過保護な大人がそれで遊ぶことを許さない。役目を終えた遊具たちは、誰からも感謝をされずに取り壊されてなくなってしまう。きっと誰よりも長くそこに住んで子どもたちを楽しませてきたのに、錆びた彼らの体を優しく拭く者もいない。
「おまえたちも寂しいよな。」
私の住む公園に唯一残っているブランコの一つに腰掛けて、私はそう話しかけた。
そうだね。
撤去されるのをただ待っているだけの二つのブランコたちが同時にそう答えた気がした。空いた席はぴくりとも動かず悲しげだった。
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