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子どものいない公園はとても静かだ。近くに住宅街があり日常を行き交う人々がその傍を行き来する時間以外は風が揺らす葉々の擦れる音しか聞こえない。
人が近くを通っても、ここに立ち入る者は誰もいない。まるでこの場所は誰にも見えていないようだ。たまに鳥が飛んできては食糧を探しに来るが、食べられるものは全て私が平らげてしまうので諦めてすぐに何処かに行ってしまう。もう少しそこにいて、私の話し相手になってくれればいのに。彼らもまた、生きるために忙しいのだろう。
不意な来客は嬉しくもあるが、面倒でもある。孤独を紛らわせるためにはうってつけだが、やはり相手は家屋に住む者。哀れみや蔑みに晒されるのはうんざりだ。優しさに触れても結局は何も変わらない。この社会では金を持つことが普通だから、いくら同じ人間だと言われても普通でない私を見る目はやはり異物を見るそれと変わらない。その日は珍しく人間の来客があったので、私はその不安を抱いていた。
人がいるのを知ったのは、思わぬ収穫に巡り合うため少しの間外出をして帰った後だった。そこにいた、黒い学生服を身につけた少年は私の椅子であり友であるブランコの一つに揺られて座っていた。古びたブランコの音が公園に響き渡っている。その音を浴びながら、少年は俯いていた。
「何してる。」
初さがその顔に残る十代半ばだろう少年に近づいて、私はそう話しかけた。酷く気が沈んでいたのだろうか、少年は私が話しかけるまで私の存在に気がついていなかった。私の声に彼はばっと顔をあげ、目を丸くして私を見た。
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