ブランコと私

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 「じゃあ僕もここにいていい?」  突然顔を上げたかと思うと、少年は私を見て言った。ここが私の住処だとは言った覚えがないのだが、少年は全てを知っているようだった。暫く体や髪を洗っていないためそれなりの臭いがしているのだろうか。  「それは断る。お前にずっと居られると誘拐犯だと疑われ兼ねない。」  私が答えると、少年はくしゃっと笑った。その顔は私に初めて少年を少年だと思わせた。  「おばさんはここが好きなの?」  少年は言った。  「今はここが私の居場所だからいるだけだ。」  私が答えると、少年はふうんと鼻で返事をした。  「寒くないの?」  少年は質問を重ねた。  「夜は寒い。」  今暖を取れるものは四方からかき集めた段ボールだけであるが、やはりそれだけでは身震いを抑えられない。だがどうしようもない。  「僕の家もエアコンないし、ストーブはお金がかかるから使ってないんだ。だから夜はいっぱい服を着て布団を頭まで被って寝るよ。」  さっき少年は母親の死を口にした。それから父親は人が変わってしまったと。恐らく少年の父親はろくに働くことも出来ず、生きていくための金が底を尽き始めているだろうことが少年の話から垣間見えた。  
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