ブランコと私

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 「おばさんは死にたいって思ったこと、ある?」  少し間が空いた後、少年は私にそう聞いた。  「わからない。」   私は答えた。  「わからないの?」  「あるかもしれないし、ないかもしれない。少なくとも記憶にある限りでは、ない。」  昔のことは遠に忘れてしまったためそう答えると、深くは掘らずに少年は次の質問をした。  「どうして生きてるのかって考えたことはある?」  「どうだろうな。」  「じゃあ、おばさんはどう思う?」  少年は恐らく、他人の人生観を聞いてまで自分が生きる理由を見つけたいのだろう。  だが、少年は聞く相手を間違えている。  「理由などない。」  私が答えると、少年はあからさまに眉間に皺を寄せた。  「生きるのに理由なんてない。生きているから、生きているだけだ。込み入った理由も必要ない。」  きっと理解出来ていないのだろう、少年は眉をひそめたまま私を見ていた。  「やっぱりおばさん、変わってるね。」  これ以上話していても理解に及ばないと諦めたのか、少年は顔に皺を寄せたまま言った。  「上等だ。」  私は答えた。
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