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ハジマリ
──次の日曜日。
最後に遅れて東海林がやってきた。遅刻していたが、悪びれる様子は一切なかった。
「これでみんな揃ったな」
拓也はそう言って、四人の顔を順に見る。僕たちはお互いに顔を見合わせた。
「あのぉ、私、この学校の七不思議について書かれた古書を持ってきたんだけど……」
そう言った近藤燕は、長い髪を耳に掛けると手提げ袋を弄った。皆でロッカーを見に行こうと決めたその日に、彼女は図書館へ借りに行ったそうだ。
「燕ぇ、そんなもん借りてきても意味ねぇぞ。実際にこの目で確かめればいいっつうの」
東海林は昔から口が悪い。せっかく近藤さんが今日のために借りてきてくれたのに、その言い方はないだろうと思った。
すると拓也が、「いいじゃん、せっかく燕が借りて来たんだし、情報は無いより有ったほうがいいに決まってる」と言い返した。
「それで近藤さん。裏山の不思議は何て書いてあったの?」と、僕は何の気なしに訊いた。
「え? わ、私……読んでない。怖いの苦手だから」
そう言って彼女は俯いてしまった。
「だ、だ、大丈夫だよ、僕も怖いの苦手だから。僕が持っててあげる」
しょんぼりしてしまった近藤さんを見て、慌ててフォローした。
「うん。ありがと」
手提げ袋に手を突っ込んだまま取り出すことを止めてしまっていた彼女は、再び手を動かし本を取り出す。僕がそれを受け取るとき、彼女の手が少し震えていた。ロッカーを見に行くことが怖いのだろうか。僕の顔をチラチラと見るが、何故か緊張している様子だった。
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