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ウラヤマ
僕たち五人は新校舎を迂回し裏手へ回った。元々この学校は山を切り崩し平坦にした場所で、山に背を向けて建っている。校舎と平行に岩肌の見えた絶壁があり、それを削り出した階段が頂上まで続いていた。高さは三階建ての新校舎と同じくらいだ。
足を踏み外さないよう慎重に登って行くと、少し開けた場所に出た、そこに防空壕の入り口があった。見た目は洞窟だ。昼間なのに中は異常に暗く見え、いかにも禍々しい雰囲気を醸し出していた。
拓也と東海林は七不思議を信じていないのか、少しも怖がる様子はなく、スマホのライトを照らし防空壕へと入って行く。僕と女子二人もあとに続いた。
「おい、おい。本当にあったぞ」
そう言ったのは、先頭を歩いていた拓也だ。
掃除道具入れに似た、縦長の細いロッカーだった。酷く汚れていて、錆びや苔が斑に付いている。何かをぶつけたような凹みが無数にあった。凹みというより、膨らみだ。内側から叩いたのだろうか。何にしても古さの印象が勝り、扉の変形は気にならなかった。
「開けてみようぜ」
と、東海林がとんでもないことを言った。
「あるかどうか、確かめるだけって言ってたじゃん」
佐藤縁がすぐに反論した。禍が起きることを恐れているのだろうか。迷信と分かっていても、怖いものは怖いよね。
「祟られたどうしてくれるのよ!」
「馬鹿じゃねぇの。禍なんて本当にある訳ないだろ。俺は開けても何も起きねぇと思う。なあ、勇馬?」
突然、同意を求められた僕は慌ててしまった。
「え? いや、僕は……」
「思うよな?」
「えーと、たぶん」
「ほら、やっぱり勇馬もこんなのただの迷信だと思ってるぜ。な?」
「う、うん」
余りに強引な誘導に、僕は仕方なく同意した。
「じゃあ、頼んだぞ」
そう言って、東海林はロッカーの前へと僕の背中を押した。
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